M&Aを検討される際に、売主側としてご自身で候補者探しをされた経験のある方も多いかと思います
この記事では、M&Aの交渉で売主が買主へ直接交渉する場合のリスクについて、分かりやすくまとめてみます
1. 交渉のパターンについて
M&Aの交渉は、仲介業者をはさんで交渉する場合と、売主自ら買主側と直接交渉する場合の2つがあります
皆さんは、M&Aの売り手・買い手側の立場で直接候補先と交渉したことがありますか?
M&Aの交渉は、企業にとって非常に重要な決断を伴うプロセスです
その交渉方法の一つとして、直接交渉が挙げられます
ですが、直接交渉には様々なリスクが潜んでいます
これから以下で具体的にM&Aの直接交渉におけるリスクについて掘り下げてみたいと思います
2. 直接交渉のリスクについて
それでは、具体的なリスクとして、5つをご紹介します
(1) 情報漏洩のリスク
まずお伝えしたいのが、売主側の情報漏洩のリスクです
売主側の場合、自分で交渉した方が当然着手金等の手数料が削減できますので、ご自身で交渉を行う方も多いかと思います
ですが、ここで注意すべき点があります!
売主側の情報を買主側である知人等の取引先へ提供した場合、情報の取扱いは買主側任せとなります
何をお伝えしたいかというと、売主側から提供した情報はいくら買主側と秘密保持の契約を交わすとはいえ、情報管理が杜撰な先へ提供した場合は様々な情報が漏洩するリスクが一気に高まります
なぜかというと、大抵の場合、買主側は売主から相談を受けた人物のみで案件の検討をすることはまずなく、
社内の主要な幹部や顧問税理士、金融機関などの複数の人物に意見を求める場合が多いからです
そのため、情報管理の統制が取りづらくなり、いつの間にか売主側の情報が拡散している、といった事態になりがちです
M&Aの交渉内容が外部に漏れると、取引先との取引条件が変更になったりすることで、株価変動や競合他社の介入を招く可能性もあります
特に上場企業の場合は、情報開示の義務があり、交渉が長期化すると情報漏洩のリスクが高まります
専門家であれば、買主側への牽制もでき、情報開示をどの範囲で行うかなど、事前に検討をした上で情報開示を行う場合が多いので、より安心です
(2) 交渉の非効率化
自ら交渉を進めてみたものの、一向に話が進展しない・・こんな経験をされたことはありませんでしょうか?
専門知識を持たない状態で交渉を進めると、非効率な交渉をすることになり、時間と労力が無駄になってしまう可能性があります
過去の事例では、買主側からの質問に対し、きちんとした回答ができず、交渉が決裂してしまい白紙に戻ってしまった会社もありました
M&Aは複雑な取引であり、法的な知識や財務的な知識が必要となります
せっかくのチャンスを逃さないためにも、専門家への相談をオススメします
(3) 評価額の不透明性
あなたは自社の企業価値をきちんと把握していますか?
専門家の目線による企業評価なしに交渉を進めると、自社の価値を正しく評価できず、不当に低い価格で売却してしまう可能性があります
M&Aでは、企業価値の評価が非常に重要であり、専門家による客観的な評価が必要です
(4) 交渉力に差が生じる
相手方の交渉力によっては、不利な条件で契約を結ばされる可能性があります
M&Aは、経験豊富な専門家同士の駆け引きであり、交渉力に差があると不利になることがあります
最近、経験が浅く交渉に慣れていない担当者がFA(片方のアドバイザー)として交渉を行っている先があり、結果として不利な条件を突きつけられている売主の経営者から相談をいただいたことがありました
経営者いわく、担当されているアドバイザーを信用して交渉をお願いしているものの、リアルな交渉の場ではどうしても相手方の交渉テンポに踊らされてしまい、自社にとって不利な条件かどうかすら分からない場面があるとのことでした
交渉が佳境に入ってくると、買い手側もあの手この手を使って有利な条件へ引きずり込もうとしてきます
どんな状況であれ、売主側としても冷静に対応したいところですが、先行き不透明な状況にあったり、資金繰りが厳しい状況下にあると、どうしても焦りが出てしまい、不利な条件に乗ってしまいがちですので注意が必要です
(5) 関係性の悪化
特に交渉相手が知人であったりすると、些細なことがきっかけとなり、
直接交渉をした場合に、感情的な対立が生じやすく、関係性が悪化してしまう可能性があります
普段は仲の良い関係であっても、いざ金銭が絡んだ交渉になると些細な内容(口頭で説明していた内容が事実と異なっていた、あるはずの資料が実際はなかったなど)がきっかけとなり、取引先等が交渉相手の場合は信頼関係が一気に崩壊してしまうこともあります
実際に、M&Aの話を取引先へ持ち掛けたことがきっかけで、長年の信頼を失ってしまった・・・・という先も過去にはありました
将来的にビジネスパートナーになる可能性も考慮し、交渉相手とは良好な関係を維持することが重要です
長年培ってきた信頼がM&Aの話をきっかけにご破算になるなんで悲しいですよねっ
3. 直接交渉を成功させるためにはどうしたらいいの?
上記のようなリスクがあるのは分かったけど、まずは自分で直接交渉をしたい場合もあるかと思います
そんな時には何かいい方法はないの?
こんな相談を受けることがあります
あまりオススメはしませんが、どうしても直接交渉をしたい場合は、専門家の活用をオススメします
具体的には、M&Aアドバイザーや弁護士などの専門家を積極的に活用し、セカンドオピニオンとして客観的な視点からアドバイスを受けることが重要です
また、情報漏洩を防ぐため、交渉に関わる情報を厳重に管理し、最小限の人数にのみ共有する必要があります
価額条件を相手に伝える際は、事前に専門家等を活用しながら、自社の価値を正確に把握し、交渉目標を明確にすることで、交渉を有利に進めることができます
交渉相手とは、可能な限り感情的な判断を避け、冷静に状況を分析し、最善の決断を下すことが重要です。
4. まとめ
この記事では、あくまで一般的な情報として、M&Aの直接交渉をする際のリスクや対応策についてまとめてご紹介しました
会社の事情や業況によっては、個別判断が必要な場合もありますので、ご注意ください
特に、業況悪化に伴い、資金繰りに窮する状況など、時間的な余裕がない時こそ慎重に判断すべきです
直接交渉をする際は、メリットとデメリットを理解した上で慎重に進める必要があります
どうしても自身で交渉をしてみたいという方は、専門家の力を借り、情報管理を徹底し、十分な準備を行うことで、リスクを最小限に抑え、成功へと繋げることができるかと思います
M&Aに関する具体的なご相談は、繰り返しお伝えしますが、専門家にご相談ください
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました
売主様にとっては、M&Aというのは一生に一度の大きなイベントだと思います
だからこそ、事前に準備できることや最低限の知識は身につけていただき、成功してほしいと願うばかりです
おわりっ
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