この記事では、事業承継税制の中で特に勘違いしやすい点として、よくご質問をいただく2つの制度のうち、主に「特例措置」を活用される際の注意点についてお伝えします
1.事業承継税制は2種類の制度がある?
事業承継税制(俗に言う納税猶予制度)は、2009年に制度が創設されてから継続している従来型の「一般措置」と、2018年の税制改正で創設された時限措置「特例措置」の2種類があり、どちらかを選択できるようになっています
「一般措置」と「特例措置」の主な違いは下記の表をご覧ください↓
一般措置 | 特例措置 | |
特例承継 計画の 提出 | 不要 | 必要 (2026年3月 末までに提出) |
適用期限 | なし | 2027年12月 末まで |
対象株数 | 総株式数の3 分の2まで (最大) | 全株式 |
納税猶予 割合 | 贈与100% 相続80% | 贈与100% 相続100% |
後継者 | 筆頭株主である 後継経営者1人 のみ | 持ち株10% 以上の後継 経営者3人 まで |
雇用確保 要件 | 承継後5年平均 で8割の雇用 維持 | 実質撤廃 |
事業継続 が困難な 事由が生 じた場合 の免除 | なし | あり |
また、令和6年度税制改正により、特例承継計画の提出期限が2024年3月末から2026年3月末へ2年間延長されました🎉
ご相談を受ける中で、この2種類の制度が並行して走っていることを知らない方が多いです
私の経験では、「制度の内容を聞いたことがある」という方は多いのですが、そもそもの制度成り立ちから知っている方はほとんどいません
そうなんです!
特典が多く見えますので、「特例措置」ばかりに焦点が行きがちですが、現時点(2024年5月時点)では「一般措置」の2種類から選択できるようになっています
「特例措置」の制度は、あくまで「一般措置」のオプションであって、2027年(令和9年)12月末でなくなる予定の制度です
※令和6年度税制改正大綱に延長しない旨の記載があります
2.特例承継計画の申請状況はどうなの?
では、実際に「特例措置」を活用しようとしている方(計画を出された方)はどのくらいいるのでしょうか?
直近のデータにはなりますが、2024年5月公表の「法人版事業承継税制(特例措置)活用事例」によると、2023年に特例承継計画を申請された先は、5,357件(全国)となっています。
「特例措置」が始まった2018年から2023年までの過去6年間のデータは、下記を参考ください
時期 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
件数 | 2,937 | 3,452 | 2,809 | 2,661 | 2,691 | 5,357 |
「特例措置」を活用するには、計画の提出が必須となっていますが、ご覧いただいた通り直近で申請件数が上昇していますが、事業承継が必要といわれる先の件数(約30万社)と比較するとまだまだ少ないと感じます
国としては制度の期限が迫っている中で、なかなか申請件数が伸びないため、かなり焦っている感じが伝わってきます
最終的に「特例措置」を選択された先の数が公表されていませんが、私の感覚では半数もいないような感じがします•••
制度自体の使い勝手が向上しない限り、いくら発破をかけても、申請件数は伸びないという感じがするのは私だけでしょうか?
3.期限経過後はどうなるの?
「特例措置」の適用期限は、先ほどお伝えした通り、2027年12月末となります
ですので、すでにまたはこれから「特例措置」を活用(選択)される方は、次の制度活用時は原則「一般措置」を選択することになるかと思います
何をお伝えしたいかと言うと、
「特例措置」を活用して、100%の株式を後継者へ「相続」された方は、次回は80%の部分のみしか納税猶予を受けられませんので、少なくとも20%に相当する部分は課税対象となります
特に株価の上昇が見込まれる先は、次の選択時に20%に相当する部分の思わぬ課税が降りかかってきますので、予め把握して置く必要があります
つまり、この制度を活用して100%ずっと納税猶予を受けることはできないということです・・・
「特例措置」は、あくまで一世代限りの特典であって、自社株の承継を促すための施策にすぎないと感じています
この点を理解の上で検討をしている方が少ないため、相談をいただいた方へはお伝えをしていますが、この記事でもご紹介しておきます
4.まとめ
この記事では、2種類の事業承継税制(納税猶予制度)のうち、「特例措置」に焦点を当ててお伝えしました
もちろん、株価が高すぎる場合等でこの制度を活用せざるをえない方等におかれましては、制度活用の一定のメリットはあるかと思います
ですが、納税を猶予し続けるには、かなりの負担(取消要件に該当しないようにするための維持管理)が次の後継者あるいはその次の後継者への負担となることを申請時点で後継者側へ説明をしておく必要があります
どんな税制でも言えることですが、活用時点のメリット・デメリットだけでなく、税制活用後の手続きや制約についてもある程度は把握しておくべきかと思います
最後に、事業承継の対策は後回しにしがちですが、時間が経過すればするほど選択肢は狭まります
対策の検討をするのは、可能な限り早めの着手をオススメします?、
最後まで読み進めていただき、ありがとうございます!!
おわりっ
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