事業承継 株主が分散している会社の方必読 廃業にまで至った失敗事例

事業承継

この記事では、株主の分散が先代の相続をきっかけに廃業にまで追い込まれてしまった実際にあった事例をご紹介します


1.失敗事例の概要

これからご紹介する事例は、地元でも有名なくらい仲の良い兄弟が経営していた会社で起きた事例です

事例の前提情報は以下の通りです

※簡潔にお伝えする関係から、内容ついては分かりやすく変更しています

【事例内容】

・甲社(非上場)は、法人設立50年以上となるリサイクル業を営む先で従業員は約30名の規模

・手掛けている事業は許認可事業で、業績も好調にあり、株価も上昇傾向にあった

・甲社は、社長A氏(50代)の父が創業し、父が100%の株式を保有していたが、15年ほど前に父の相続が発生

・父の相続により株式の80%をA氏の母が相続し、残りの株をA氏とA氏の弟B氏が10%ずつ相続した

・社長のA氏は、経営全般と対外的な営業を担当し、B氏は専務という立場で、現場の取りまとめをしていた

・A氏とB氏はともに既婚で、家族は子供2名ずつの各々計4名、子供はともに娘という構成であり、娘たちは後継候補にはふさわしくなく、後継者が実質不在の状態であった

・A氏とB氏の妻は2名ともに役員に就任しており、総務及び経理面を管理する立場で仲良も良い関係を維持してきた

・その後、母に相続が発生し、遺言作成がなかったため、遺産分割協議によりA氏とB氏が母の自社株を均等に分配することとなった

・結果として、母の相続後の株主構成は、

A氏50%、B氏50%の半々となった

・母の相続手続きが落ち着いた後、B氏が定年を迎えたため、引退したいとA氏へ相談を持ちかけてきた

・B氏からは、役員退任の際に退職金の支給と自社株の買取りをしてほしいという要望が来ており、A氏は後継者不在の問題もあるため、顧問税理士へ相談(この相談はにB氏やB氏の妻には内密にしていた)

・顧問税理士へ相談した結果、M&Aによる候補先探索を勧められ、大手M&A仲介会社を紹介された

・A氏は仲介会社の担当者から言われるがままに、相談を進め候補先探索をする決断をした

・仲介会社の担当者からは、「最終的にB氏にも譲渡に関し了解を得る必要があり、株式も売却することになる」点の説明を受けていたが、内密に進めたいとの意向が強く、そのまま交渉を進めることにした

・その後、仲介会社から甲社宛に届いた1通のメールをB氏の妻が発見したことをきっかけに、B氏がA氏に対し代表取締役及び取締役の辞任を要望してきた


2.その後何が起きた?

A氏は、顧問税理士へB氏から上記の要望を受けたことを相談したところ、会社の分割を検討されては?という提案を受けた

ちょうど、私の方へ社長のA氏から相談が入ったのはこの時期です

私からは、M&Aの選択肢を継続するのであれば、今の許認可事業(産業廃棄物収集運搬業許可)を2つの会社へ許認可ごと2つに分割することはできない点を指摘しました

つまり、A氏とB氏の株主でそれぞれ2つの会社へ分割し、「A氏が株主となっている会社だけを売却することはできない」ということです

顧問税理士にも同席してもらい、私も今後の対策について協議を続けましたが、特にB氏の妻は理解を示してもらえませんでした・・・

その後時間とともに、弟夫妻からの兄夫妻への疑念の感情は徐々に高まっていき、結論として「会社を解散し残余財産を分け合う選択をされた」のでした

当然ですが、会社を清算し解散手続きをするということは、「配当所得として払い戻しされた分が課税を受ける」ため、M&Aの場合と比較し手取り額が約半分くらいとなってしまいました


3.では、どうすればよかった?

今回の事例では、

①遺言がなかったため、A氏の母の相続時に自社株を均等に配分してしまった点

②M&Aの決断をする際に、B氏には内密にしながら交渉を開始した点

の2つが主なポイントかと感じています

一般的に、事業承継を検討する際は、「経営者が株式の2/3以上保有する」というのが、基本となります

なぜかと言うと、株式の2/3を保有していれば、特別決議という決議(大抵のことができる決議内容)が株主1人で可決できるからです

今回の場合ですと、当初から後継者不在の状況と分かっていたわけですので、早めに顧問税理士以外の専門家へ相談をしていれば、

「母が保有していた株式を長男のA氏へ集約し資金化しておく」

ことや

「遺言を作成し自社株の承継先をA氏に指定しておく」

などの対応により、状況は変わっていたかもしれません。

また、M&Aという重要な選択をするのであれば、B氏にも入り口段階から打ち明けておくことで、後で疑念を抱くようなことが回避できたのではないかと思います


4.まとめ


この記事では、自社株の分散により最終的に廃業を選択された先の事例をご紹介してきました

そんなことが本当に起きるの?

と思われるかもしれませんが、実際に起きた事例となります

兄弟が仲良く経営をしている会社は多く存在していますが、先代からの自社株の相続をきっかけに、仲違いが生じる場合が多いです

中でも「当事者の配偶者からの意見」から事が始まるようなケースが多いです

そうならないためにも、自社株の承継は可能な限り早めに次の後継者へ移行する検討を進めてほしいと思います

先代からの株式移転がすぐに難しいのであれば、遺言作成により承継者を特定の方へ指定しておくことが有効です

また、許認可事業を営んでいる会社は、許認可の種類によっては分割できないものもありますので、注意が必要です

少しでも円満に自社株の承継が完了し、廃業することなく、事業継続できる会社が増えることを願っています

最後までお読みいただきありがとうございました!!

これからもよろしくお願いします!!

おわりっ

コメント

タイトルとURLをコピーしました