M&A 引継ぎに失敗 廃業へ

M&A

この記事では、これまでの経験の中で実際にあったM&A成約後の引継ぎに失敗した事例をご紹介します

M&Aは「成約まで進むことがゴール」と思いがちですよね

でも実際は違うんです

売主がハッピーリタイアをするには、きちんとした引継ぎが重要となります

候補先の選定によっては成約後の引継ぎが難航することがあります

同じ轍を踏まないよう、ぜひ下記事例を参考にしてもらいたいと思います


1. 引継ぎに失敗してしまった事例

A社は、特殊な加工技術を保有する製造業を営む先でした

オーナー兼社長のB氏は、80歳後半になっていました

社内に後継者候補はいたものの、後継者としての育成はしていませんでした

特殊な加工技術の大半は、社長のB氏が保有していました

従業員は機械設備を操作することにより、一部の加工はできるものの、強みである特殊な加工はB氏任せにしていました

B氏は職人気質で、経営者というよりは技術者の側面が強い人物でした

B氏は体調不安もあり、早期に後継者探しが必要となっていました

かなり遅い段階からの出発となりましたが、私の方へ相談をいただき早速着手することになりました

候補者探索は、一定のこだわりを持たれ、近隣の同業者や取引の関係のある先以外を要望されていたこともあり、遠隔地の異業種の中からまずは探すこととしました

その後、複数の候補先から打診があり、面談を繰り返しました

その後、B氏は条件交渉がうまくいった異業種のC社と契約をすることになりました

買い手のC社は、A社の事業に興味を持ってはくれたものの、B氏が保有する技術がC社にはなく技術の承継が早期に必要と感じていました

そのため、リスクヘッジとして社長のB氏に顧問として最低2年間は技術面の引継ぎをしてほしいと要望を出し、過去にA社の事業に少し関与したことのあるDさんをA社の技術承継者として派遣することになりました

M&A成約後、早速前社長のB氏は、Dさんに技術面の承継を開始しましたが、職人気質のB氏は他人に直接指導をした経験があまりなく、なかなかうまく技術の承継ができません

そうこうしているうちに、Dさんは顧問のB氏と対立するようになり、A社を休みがちになり、ある日退職願いを出されたのでした

買主のC社は他の担当者を派遣しようとしましたが、顧問であるB氏の体調が悪化してしまい、特殊な技術の承継が実質困難となりました

その後、B氏は入退院を繰り返すこととなり、ついにはA社の取引先へ取引解消の通知をせざるを得ない事態となり、廃業を選択することとなりました

以上が事例の内容となります

本当にそんなことが起きるの?と思われる方が見えるかもしれませんが、この事例と似たケースは他にもありました💦


⒉ どうすればよかった?

この事例の失敗となった要因は、M&Aの買主候補を探索する際に、成約することを優先するあまり、成約後の引継ぎについて事前に検討をしていなかった点かと思います

買主側へは、社長B氏の性格や保有している技術を承継することが難しい点など、成約前に検討をいただき、理解をいただいた上で買収をしていただきました

ですが、体調不安もあったことからB氏とDさんとの面談を成約前に実施できず、Dさん自身の経験やスキルを詳細に確認するなどの手続きも実施せずに引継ぎの実務をすることになりました

交渉相手の買主社長は、あくまで経営者であり、現場の実務までは精通していなかったため、Dさんへの引継ぎについて「何とかなるだろう」と思い込んでいたそうです

以上のことから、この事例のように異業種への引継ぎをする際に失敗することなく成功へ導くには、次の点に注意する必要があったといえます

・異業種の候補先へ引継ぎをする際には、実際に引継ぎ実務を行う買い手側当事者について

① 適正な人物かどうか、経歴はどうか

② 引継ぎ業務をこなせる力量があるのか

③ 売主の引継ぎ相手となる人物の性格を理解しているか

④ 具体的な引継ぎスケジュールをどうするか、引継ぎ相手の体調は問題ないか、常駐できるのかどうか

⑤ 適性者がいない場合は外部から連れてこれるかどうか

などを売主と事前に面談するなどにより、事前に確認しておくと、失敗のリスクが軽減できます


3. まとめ

この記事では、M&Aで候補先を探索する際に異業種の相手を選択後、属人的な技術の承継がうまくいかず、最終的に廃業を選択することになった事例をご紹介しました

M&Aを成功に導くためには、PMIといった成約後の引継ぎがとても重要になります

※PMIについては↓も参考ください

PMIとは何かを紹介しています

これまでの経験では、売主側の様々な都合から買主側との交渉を急ぐあまり、成約後の引継ぎ実務の検討をあまりせずに、契約締結へ進めたケースが多々ありました

もちろん、事例のように特殊な技術を保有されているなど、引継ぎが重要なポイントとなるようなケースでは、候補先の探索を同業者の中で進めていれば、引継ぎ実務でつまずくリスクはある程度軽減できるかと思います

ですが、実際にアドバイザーとして相談対応をしている中では、どうしても難しい方向へ進まざるを得ないケースもあります💦

同じ失敗を繰り返す方が現れないよう願いたいですが、事例と似た立場の方がみえましたら、上記のような事前確認をしっかり行ってほしいと思います

最後までお読みいただきありがとうございました❗️

これからもM&Aが成功へ向かうための情報をお届けしたいと思います

おわりっ

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