事業承継 事業承継税制の活用を検討されている方必読 後継者以外の子供の負担が増えた失敗事例

事業承継

この記事では、事業承継税制(納税猶予制度)を活用した自社株の相続を受けた後継者から実際に相談を受けた失敗事例をご紹介したいと思います


1.失敗事例の概要

これからご紹介する事例は、業績が好調で株価が上昇傾向にある会社であれば、どの経営者にも当てはまる要素があります

事例の前提情報は以下の通りです

※簡潔にお伝えする関係から、内容や金額については分かりやすい数字へ変更しています

【事例内容】

・親族構成:父(先代オーナー)、母、長男(後継者)・次男(社外に勤務、事業関与なし)の4名

・株主構成:父70%、母20%、長男5%、次男5%の4名

・父の相続遺産は、自社株(贈与時の評価で5億円)、事業不動産(相続評価で1億円)、自宅及び金融資産(預金1億円)

・業況が好調で利益計上が見込まれる決算直後に、先代オーナーの体調不安から事業承継税制による贈与(特例措置)を実施し、長男へ父の保有全株を移転、その直後に父の相続が発生

・相続に伴い、長男が自社株を、母が自宅を、次男が金融資産の内訳で分割協議を行った

・事業承継税制の活用は、顧問税理士から勧められた経緯があり、自社株の評価に関するアドバイスはほぼなかった

・親族の仲は良好であったため、遺言の作成はなかった


2.相続発生後の結末はどうなった?

結論からお伝えすると、相続発生後に自社株は税金ゼロで長男へ移行でき、長男は議決権の2/3以上を確保することになりました

ですが、自社株以外の資産を受け継いだ次男は相続税負担が大きくなり、兄弟ケンカが勃発しました

次男は、金融資産(1億円)を相続したものの、相続税の納税(約3,000万円)が発生したため実質の配分は当初の約7割となってしまい、長男の自社株評価5億円と比較し遺産配分が極端に少なくなってしまいました

最終的には、次男が長男に対して最低取り分を取り戻そうと、遺留分侵害請求をすることへ発展しており、未だ解決していない状態です・・・

長男からすると、相続をきっかけに事業に関する問題以上に時間や労力を費やさざるを得ない問題が勃発してしまい、会社の経営に支障が出始めています

※母は配偶者控除がありますので、法定相続分1/2までの相続であれば税金はかかりません。


3.なぜ次男の納税負担が大きくなったのか?

事業承継税制を活用した場合、相続時の自社株評価は、「贈与時」の評価で計算することになります

また、特例措置を活用して長男へ「贈与」をしていたとしても、制度自体を「相続」へ切り替える必要があり、相続税の計算には「自社株の評価を含める」必要があります

つまり、自社株の評価が高くなればなるほど、相続税を計算する際の遺産総額が増加することとなり、税率も高くなってしまうのです

あ長男が納税すべき自社株に係る税金はゼロとなりますが、少ない資産を相続した次男にとっては、税負担が重くなり思わぬ出費が発生することになります


4.株価が高額となる場合は特に注意!

この事例では「株価が高額となる(利益が出たタイミング)で事業承継税制を活用した点がポイント」となりました

自社株の評価は、直近決算の情報をもとに算出しますが、利益計上のタイミングによっては株価が高額になってしまうケースがあります

非上場株式は、株価の計算式が決められているため、株価対策をすることで、評価額を引き下げすることが可能です

急いで事業承継税制の活用を検討をされている方は、「贈与前に可能な限り株価を下げた状態にしておく必要」があり、特に注意が必要です

会社のオーナーは、自社株や事業用不動産など金融資産以外の資産が大半を占める方が多いです

そのため、事業に関与しない相続人がいる場合は不公平な配分とならざるを得ません

加えて、後継者への自社株承継に重点を置き過ぎるあまり、後継者以外の子息が受け継ぐ資産に係る税負担のことを気にしていないと、想定外の争いが起きてしまいます


5.まとめ

この記事では、事業承継税制の活用を選択した際に、後継者への株式承継(税務負担の軽減)を優先しすぎてしまい、後継者以外の税務負担が極端に大きくなってしまった事例をご紹介しました

事業承継対策を検討する際は、会社規模が大きいほど株価が高額となる場合が多く、制度上のデメリットを理解しないまま活用すると思わぬ落とし穴があります

後継者以外に子息がみえる方は、後継者の税負担だけでなく、後継者以外の税負担がどうなるのかについても検討しておく必要があります

事業承継をきっかけに仲が良かった親族がバラバラになるなんて辛いですよね?

サポートしている側からするとこんな悲しいことはありません・・・

少なくとも先代オーナーはそんなことを考えていないはずです

特定の方にメリットがある場合は、他方の方にデメリットが生じていないかを立ち止まって考えてほしいと思います

何事もバランスよく検討しておくことが大事ですね!

最後まで読んでいただきありがとうございます!!

おわりっ

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