事業承継 株価にお悩みの方必読 赤字決算なのに株価が高額なぜ?

事業承継

この記事では、事業承継に関するご相談を受ける中でよく質問を受ける「株価評価」のうち、6つの「特例の評価会社」の一つである「比準要素数1の会社」について触れてみたいと思います

難しく感じるかもしれませんが、できる限り分かりやすくお伝えしますので、最後までお付き合いください!!


1.赤字決算なのに株価が高額?

これまでに相談を受けてきた中で、

「赤字決算(利益が出ていない)なのに株価評価が高くなっていると税理士から言われた・・・」

「赤字にしておけば株価が下がると思っていたら、逆に株価が上がってしまった・・・」

といった内容の話をされる経営者が多かったです

えっ?「赤字なのに株価が上がることがあるの?」と普通は疑問になりますよね

通常であれば、「利益を下げれば株価は下がる」ということになりますが、実は「例外」があるんです

株式上場している会社の株価は、日々の取引により「株価(時価)」を把握することができます

ですが、非上場会社の株式は、株価を決められた計算式で「自分で計算」する必要があります

非上場株式の株価は、国税庁が定めた一定の計算式に当てはめて算定することになります

ですが、「特定の評価会社」の「比準要素数1」というものに該当してしまうと、

「一般の評価会社」の計算方法ではなく、「特例」扱いとなり、株価が高くなります

株価が高くなると、自社株を移転する際は不利になります


2.「比準要素数1」の会社とは?

「比準要素数1」という呼び名は、自社株の株価を算出する際の専門用語の一つです

「比準要素数1の会社」とは、「一般の評価会社」で使用する評価方法(類似業種比準方式)で評価する場合の3つの要素である1株当たりの「配当金額」、「利益金額」「簿価純資産価額」のうち、

① 評価直前期末の要素のいずれか2つがゼロであり

かつ、

② 評価直前々期末の要素のいずれか2つ以上がゼロ 

である会社をいいます

ここでいう「利益金額」というのは、決算書上の利益(会計上の利益)ではなく、税務上の利益(別表に記載する利益)の方をベースとして算出をするので、注意が必要です

「利益金額」のイメージは、決算書上の「営業利益」に近いものとなります

では、どういう会社が該当するのかというと、

過去の利益が蓄積されており、「簿価純資産価額」がプラスの会社に多い傾向があります

過去に儲かっていた会社で直近の利益が2期連続赤字かつ2期連続(正確には3期連続配当がゼロ)の会社が該当します


3.「比準要素数1の会社」に該当するとどうなるの?

「比準要素数1の会社」に該当すると、どうなるのでしょうか?

「比準要素数1の会社」に該当すると、

株価の評価は、原則「純資産価額方式」(一番高い株価)となります

ただし、類似業種比準価額(一番低い株価)の25%だけ盛り込んだ折衷方式による評価方法を選択することにより若干の引き下げは選択可能となっています

「一般の評価会社」の株価を算定する際は、上場会社の類似する業種の株価と、上記の3つの要素「配当・利益・純資産額」を比べて株価を算定することになります

ですが、上場会社の類似する業種の株価と比較する要素が1つのみ(比べるものがない)となった場合は、適正な評価ができませんので、このような特例の計算式(ペナルティ)が設けられているのです

特に一番影響があるのが、「大会社」という規模(従業員が70名以上等)に該当する会社です

大抵の場合、「大会社」に該当すると株式評価額は、規模が小さい会社と比較し有利な株価(低めの設定)で算出できることが多いです

ところが、「比準要素数1の会社」に該当すると、一番高い評価方式へ変更となりますので、想定外の株価となってしまうのです

ここで注意いただきたいのは、

株価対策のために、意図的に利益を圧縮している会社は該当するリスクが高くなるのは当然ですが、

外部環境の変化等からやむを得ず赤字になった場合も、「一律に判定をされる」点です

万が一、該当してしまった場合(該当する可能性がある場合)は、次の項目でご紹介する方法により一定の対策が可能です

過去には、リーマンショック時や東日本大震災の時期に「比準要素数1の会社」に該当してしまい、想定外の株価で算定することとなった後継者の方がみえました・・・・

定期的に株価を算定されていれば、十分回避できたものと思いますが、お話を聞く限りでは対策はほぼ何もされていなかったようです・・・


4.回避するにはどうしたらよいの?

事業計画で多額の減価償却費を計上する必要がある場合や、外部環境の変化から赤字が継続してしまう場合などで「比準要素数1の会社」に該当する可能性が高い場合は、

株主への「配当支払いを実施する」ことで、3つの要素(配当・利益・純資産価額)のうち2つ(配当と純資産価額)をゼロ以上にすることができ、「比準要素数1の会社」を回避することが可能となる場合が多いです

「配当支払い」は赤字でも資本金額を下回らなければ、実施することが可能です

配当額は少額でも構いませんが、判定をする際のルール(計算の結果、0円未満となる場合は10銭未満を切捨て)に注意する必要があります


5.まとめ

この記事では、赤字決算なのに株価が高額となるワケについて、ご紹介をしてきました

これまで相談を受けてきた中では、

経営者の方から、「設備投資は事業を成長させるのに必要なイベントなのに、事業承継(自社株移転)の障害になるなんて想定していなかったよ・・・」など、実際に設備投資を実行した後(想定外の状況になった後)で相談をされる方も多くありました

事業承継は、自社の「株価評価」及び「将来の株価予測」を知ること が第一歩となります

そのためには、自社株の評価ルールを知っておくことが必要なのですが、評価ルールは非常に複雑でややこしい内容となっています

ですが、この記事でご紹介した内容を少しでも頭の片隅に覚えておくことで、自社株を移転させる際の「想定外の状況」を回避することができるのではないでしょうか?

特に、自社株の移転を検討されており、純資産額が高額(過去の蓄えが潤沢)の会社の場合は、

数年間利益が計上できないなどの「特殊な状況」(工場増設や本社建替えなどの多額の設備投資を行う計画)行う前

に自社株の評価がどうなっていくのかを確認しておくことが大切です

過去には、会社を少しでも良くするために設備投資を行った結果、自社株移転をする際に株価が高額になってしまい、後継者の税務負担が重くなってしまった・・・という会社もありました

このような事態にならないためには、「定期的に株価の把握をしておく」ことが最も重要かと思います

また、上記のケースに当てはまる会社の経営者の方がみえましたら、事業承継に精通した(株価評価の仕組みを理解されている)専門家への相談をおススメしたいと思います

最後までお読みいただきありがとうございました!!

これからも皆様の事業承継が円滑に進むための情報発信を継続していきますので、よろしくお願いします‼️

おわりっ

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